オーストラリアで保育士(チェイルドケア)として働くための条件

オーストラリアで保育士を目指す方のために、取得可能な資格やプログラム、具体的なコース内容、費用についてご案内いたします。オーストラリアの保育士資格は主に以下の3つのレベルに分かれています。

保育士になるために必要な条件

1. Certificate III in Early Childhood Education and Care

概要: この資格は、チャイルドケアセンターでアシスタントとして働くための基礎的な資格です。0歳から5歳までの子どものケアや教育に関する基本的な知識とスキルを学びます。コースには、子どもの健康・安全のサポート、多様性の理解、遊びを通じた学習支援などが含まれます。

期間: 約6ヶ月から1年

費用: 約6,000ドルから14,000ドル

入学条件:

  • 学歴: 日本の高校1年生修了以上
  • 英語力: IELTS 6.0(各セクション5.5以上)

実習: 認可を受けたチャイルドケア施設で160時間の実習が必要です。

この資格を取得することで、チャイルドケアアシスタントやベビーシッターとして働くことが可能です。

対象: 保育補助やアシスタントとして働くための基礎資格

主な履修科目:

科目名

内容

子どもの健康と安全の確保

幼児の健康管理、緊急時対応、衛生管理

幼児の発達と行動の理解

乳幼児の成長過程、認知・感情・身体の発達

遊びを通じた学習支援

乳幼児の遊びの重要性、適切な活動の計画と実施

子どもの栄養と食事管理

健康的な食事の提供、食物アレルギーへの対応

児童福祉と保護

児童虐待の予防と対応、法律と倫理の理解

家族や地域との関係構築

保護者との連携、地域コミュニティとの関係

実習(160時間)

チャイルドケアセンターでの実践的経験

就職先:

  • 保育アシスタント
  • ファミリーデイケアのアシスタント
  • ベビーシッター

2. Diploma of Early Childhood Education and Care

概要: この資格は、チャイルドケアセンターでリーダーシップを発揮するための中級レベルの資格です。子どもの発達に合わせたカリキュラムの作成や、スタッフの指導・管理など、より専門的な知識とスキルを習得します。

期間: 約1年から1年半

費用: 約19,000ドルから36,000ドル

入学条件:

  • 学歴: 日本の高校卒業、またはCertificate III修了
  • 英語力: IELTS 6.0(各セクション5.5以上)

実習: 認可を受けたチャイルドケア施設で280時間の実習が必要です。

この資格を取得することで、ルームリーダーやセンターのチームリーダー、マネージャーとしての役割を担うことができます。

対象: チャイルドケアセンターでリーダーとして働くための資格
学習内容: 子どもの教育・発達支援、カリキュラム作成、管理業務など

主な履修科目:

科目名

内容

教育プログラムの計画と評価

乳幼児教育カリキュラムの作成、評価方法

幼児教育のリーダーシップ

保育士チームの管理・指導、効果的なコミュニケーション

家族・地域との連携

家庭と保育環境の連携、地域資源の活用

職場の安全管理

労働環境の安全確保、リスクマネジメント

多様性と包括的教育

文化的背景の異なる子どもへの対応、インクルーシブ教育

乳幼児の発達と特別支援

発達障害や特別な支援が必要な子どもへの対応

実習(280時間)

リーダーシップを発揮しながらの実務経験

就職先:

  • チャイルドケアセンターのルームリーダー
  • 幼児教育プログラムのコーディネーター
  • 家庭向け教育支援サービス

3. Bachelor of Early Childhood Education

概要: 大学で提供される学士号で、幼児教育の専門家としての高度な知識とスキルを習得します。0歳から8歳までの子どもを対象とした教育方法、カリキュラム開発、教育理論などを学びます。

期間: 3年から4年

費用: 年間約26,750ドルから38,800ドル

入学条件:

  • 学歴: 日本の高校卒業
  • 英語力: IELTS 6.5から7.5(各セクション6.0以上)

実習: 認可を受けた教育・保育機関で805時間(115日)の実習が必要です。

この学位を取得することで、幼稚園の教師や長期デイケアの教師、教育関連の行政職など、幅広いキャリアパスが開けます。

オーストラリアでは、保育士の需要が高まっており、今後も増加が予想されています。オーストラリア政府の労働市場情報によると、今後5年間で保育士の需要は5.9%増加するとされています。

対象: 幼稚園・保育園の教師や幼児教育の専門職を目指す方向け
学習内容: 幼児教育の理論、発達心理学、教育政策など高度な学問領域

主な履修科目:

科目名

内容

幼児教育の理論と実践

幼児教育の歴史、最新の教育理論と実践

乳幼児の発達心理学

幼児期の認知・社会・言語発達の理解

特別支援教育とインクルージョン

障がい児のサポート、個別支援計画の作成

カリキュラム設計と評価

教育プログラムのデザイン、評価手法

幼児教育における研究と政策

教育研究の方法、政府の保育政策の理解

教育現場での実習(800時間)

幼稚園・小学校での実習経験

就職先:

  • 幼稚園・保育園の教師
  • チャイルドケアセンターのディレクター
  • 幼児教育の研究者・行政職

給与について

保育士の給与は資格や経験、雇用形態によって異なります。以下は一般的な給与の目安です。

資格・職位

雇用形態

最低時給(AUD)

月給(AUD)

年収(AUD)

アシスタントカジュアル(保育補助)

カジュアル

$28.89

$2,715

$32,000

エデュケーター(保育士)

フルタイム

$26.18

$3,979

$60,000~$65,000

ルームリーダー(担任)

フルタイム

$30.84

$4,687

$70,000~$80,000

また、2024年12月から政府の支援により、保育士の給与が15%引き上げられる予定です。これにより、週あたり最低$103の増加が見込まれ、2025年12月までにさらに増加する予定です。

シフトについて

保育士の勤務シフトは、施設の運営時間や雇用形態によって異なります。一般的には以下のようなシフトが考えられます。

  • フルタイム:週5日、1日7~8時間勤務。早番(午前7時~午後3時)や遅番(午前10時~午後6時)など、シフト制で勤務することが多いです。
  • パートタイム:週2~3日、1日4~6時間程度の勤務。家庭の事情や学業との両立を図るために選ばれることが多いです。
  • カジュアル:勤務日や時間が不定期で、必要に応じてシフトが組まれます。時給は高めに設定される傾向がありますが、有給休暇などの福利厚生は限定的です。

オーストラリアでは、保育士1人あたりが担当する子どもの数が法律で定められており、例えば0~2歳児の場合、保育士1人に対して子ども4人までとされています。

このため、適切な人員配置が求められ、シフトもそれに合わせて組まれます。

全体として、オーストラリアの保育士は安定した需要と比較的高い給与水準が魅力であり、働き方も柔軟に選択できる環境が整っています。

オーストラリアで保育士になると永住権はとれるのか?

オーストラリアで保育士として働くことは、永住権取得への道の一つとなり得ます。しかし、永住権を取得するためには、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 資格取得:
  • Diploma of Early Childhood Education and Care: この資格を取得することで、チャイルドケアセンターのリーダーやマネージャーとして働くことが可能となります。資格取得後、オーストラリアでの実務経験を積むことが重要です。
  1. 実務経験:
  • 職務経験: 永住権申請には、通常、関連分野での一定期間の実務経験が求められます。具体的な年数や内容は、申請するビザの種類や最新の移民法によって異なります。
  1. 英語力:
  • IELTSスコア: 一般的に、IELTSで各バンド6.0以上のスコアが必要とされます。高い英語力は、資格取得や就労、そして永住権申請の際に重要な要素となります。
  1. スポンサーシップ:
  • 雇用主からの支援: 一部のビザカテゴリーでは、雇用主からのスポンサーシップが必要となります。そのため、雇用主と良好な関係を築き、サポートを得ることが重要です。

また、2024年12月の移民法改正により、保育士としての永住権取得がより現実的になったとの情報もあります。具体的には、職務経験の要件が緩和され、保育士が永住権取得の対象職種リストに含まれるようになったと報告されています。

ただし、移民法やビザの要件は頻繁に変更されるため、最新の情報を確認することが不可欠です。永住権取得を目指す場合は、移民弁護士や公式の移民関連ウェブサイトを通じて、最新の要件や手続きを確認することを強くお勧めします。

ワーキングホリデーで保育士として働けるの?

オーストラリアのワーキングホリデービザ(ワーホリ)を利用して、保育士として働くことは可能です。ただし、現地の保育施設で正式に保育士として勤務するためには、オーストラリアの保育士資格である Certificate III in Early Childhood Education and Care の取得が求められます。この資格は通常、半年から1年程度で取得可能であり、取得後は保育補助として働くことができます。

ワーホリ期間中に資格取得と就労を目指す場合、以下のステップが一般的です。

  1. 語学学校への通学:まず、英語力を向上させるために語学学校に通います。英語力は、資格取得や就労の際に重要な要素となります。IELTS6.0はワーホリの就学期間4カ月での取得は厳しいため、まずは学生ビザで語学留学をしましょう。
  2. 資格取得コースへの入学:語学力が一定レベルに達したら、保育士資格取得のための専門コースに入学します。このコースでは、理論と実習を通じて必要なスキルを習得します。この段階でもまだ学生ビザとなります。
  3. 実習の実施:コースの一環として、現地の保育施設での実習が含まれます。実習を通じて、実践的な経験を積むことができます。
  4. 就労:資格取得後、保育補助として現地の保育施設で働くことが可能となります。ここで初めて、ワーホリビザが活用できます。ワーホリビザの特性上、同一雇用主の下での就労期間には制限があるため、複数の施設で経験を積むことも視野に入れると良いでしょう。

また、資格取得前でも、デミペアオペアといったプログラムを利用して、現地の家庭で子どもの世話や家事を手伝いながら滞在費を抑える方法もあります。これらのプログラムでは、語学学校に通いながらホストファミリーのサポートを行うため、英語力の向上と現地の文化理解に役立ちます。

なお、オーストラリアの保育士の給与は、日本と比較して高めに設定されています。例えば、Certificate III 修了者の場合、時給は約25.78オーストラリアドル(約2,320円)とされています。

学生ビザでまずは保育士資格を取得し、ワーホリ期間中に現地での就労経験を積むことは、将来的なキャリア形成にも大いに役立つでしょう。

おすすめの専門学校とコース費用

以下に、各資格を提供している教育機関とそのコースの詳細を一部ご紹介します。

TAFE NSW(シドニー)

  • コース名: Diploma of Early Childhood Education and Care(Certificate IIIとのパッケージ)
  • 期間: 2年(1年+1年)
  • 学費: Certificate III: 12,080ドル、Diploma: 28,590ドル
  • 入学時期: 2月、7月
  • 入学条件: 学歴:日本の高校1年生修了(Diploma進学にはCertificate III修了が必須)、英語力:IELTS 6.0(各セクション5.5以上)

Melbourne Polytechnic(メルボルン)

  • コース名: Bachelor of Early Childhood Education
  • 期間: 3年
  • 学費: 67,920ドル
  • 入学時期: 2月、7月
  • 入学条件: 学歴:日本の高校卒業、英語力:IELTS 6.5(各セクション6.5以上)

オーストラリアで保育士を目指す方のために、以下の教育機関が提供するコースをご紹介いたします。各校とも、実践的なカリキュラムと充実したサポートで知られています。

Charlton Brown(チャールトン・ブラウン)

概要: Charlton Brownは、ブリスベン、ゴールドコースト、ホバートにキャンパスを持つ専門学校で、30年以上の歴史を誇ります。保育、介護、ビジネスなど多岐にわたるコースを提供しています。

提供コース:

  • Certificate III in Early Childhood Education and Care
    • 期間: 52週間
    • 費用: 9,500ドル
    • キャンパス: ブリスベン、ゴールドコースト、ホバート
    • 入学条件: IELTS 5.5以上(各セクション5.5以上)
  • Diploma of Early Childhood Education and Care
    • 期間: 52週間
    • 費用: 9,500ドル
    • キャンパス: ブリスベン、ゴールドコースト、ホバート
    • 入学条件: Certificate III修了、IELTS 5.5以上(各セクション5.5以上)

これらのコースは、毎月入学が可能で、実践的なスキルと知識を習得できます。

globalstudy.info

Cairns College of English & Business(ケアンズ・カレッジ・オブ・イングリッシュ&ビジネス)

概要: CCEBは、ケアンズ市内中心部に位置する専門学校で、英語コースと専門コースを提供しています。自然豊かな環境で学ぶことができ、留学生に人気の学校です。

提供コース:

  • Certificate III in Early Childhood Education and Care
    • 期間: 1年間
    • 費用: 4,250ドル
    • 入学条件: IELTS 4.0~4.5
  • Diploma of Early Childhood Education and Care
    • 期間: 1年間
    • 費用: 8,500ドル
    • 入学条件: Certificate III修了、IELTS 5.0

これらのコースは、年間を通じて複数の入学時期が設定されており、柔軟に学習を開始できます。

japamate.com

Australian Learning Group(オーストラリアン・ラーニング・グループ)

概要: ALGは、シドニー、ブリスベン、メルボルン、アデレードにキャンパスを持つ専門学校で、保育、介護、フィットネスなど多様なコースを提供しています。

提供コース:

  • Certificate III in Early Childhood Education and Care
    • 期間: 1年間
    • 費用: 9,800ドル
    • 入学条件: IELTS 5.5以上(各セクション5.0以上)
  • Diploma of Early Childhood Education and Care
    • 期間: 1年間
    • 費用: 9,800ドル
    • 入学条件: Certificate III修了、IELTS 5.5以上(各セクション5.5以上)

これらのコースは、年間を通じて複数の入学時期があり、実践的な学習と業界知識を組み合わせたカリキュラムが特徴です。

alg.edu.au

The Gordon(ザ・ゴードン)

概要: The Gordonは、ビクトリア州ジーロングにある公立の職業訓練機関で、130年以上の歴史を持ちます。多様な職業教育と訓練コースを提供しています。

提供コース:

  • Certificate III in Early Childhood Education and Care
    • 期間: 1年間
    • 費用: 約12,000ドル
    • 入学条件: IELTS 5.5以上(各セクション5.5以上)
  • Diploma of Early Childhood Education and Care
    • 期間: 1年間
    • 費用: 約14,000ドル
    • 入学条件: Certificate III修了、IELTS 6.0以上(各セクション5.5以上)

The Gordonは、実践的な教育と地域社会との強い連携で知られており、学生のキャリア形成をサポートしています。

各教育機関とも、理論と実践を組み合わせたカリキュラムを提供しており、実習を通じて現場での経験を積むことができます。詳細や最新の情報については、各校の公式ウェブサイトをご確認ください。

これらの情報は、各教育機関やコースによって異なる場合がありますので、最新の情報を確認することをおすすめします。

オーストラリアで保育士を目指すには、これらの資格取得が重要なステップとなります。各コースは理論と実践を組み合わせたカリキュラムで構成されており、実習を通じて現場での経験を積むことができます。また、資格取得後はオーストラリア国内での就職や永住権取得の可能性も広がります。

学校訪問記

今回は、チェイルドケアコースのあるCCEB(ケアンズ)を訪問してきました。他の学校に比べて費用が安く、手厚いサポートがあるこの学校はチェイルドケアの資格を探す方には一押しです。専門コースには州立と私立がありますが、私立のほうが費用が安く、日本人スタッフの在籍率も高いため、おススメです。

CCEBにはナミさんという日本人スタッフが在籍していますが、彼女自身もこの学校のチェイルドケアコースを受講した卒業生の1人です。コロナ禍に留学生がこなくなってしまった時、ナミさんはチェイルドケアを受講して、保育士として働いていたそうです。

コースには実習がありますが、この実習の時点でもう時給が発生するので、かなりの収入になったそうです。

ナミさん自身も2児の母なので、子供の世話はとても楽しいとおっしゃっていました。

このコースは、日本で幼稚園、保育園の先生だった方はもちろん、子供に関わる仕事がしたい、という新しいキャリアにもなりますし、小児科の看護師さんにも人気です。

余談ですが、看護師になるには英語力含めて、

子供に関わる仕事がしたい、将来的に自分が親になった時にオーストラリアの子育て事情を知っておきたいといった理由で受講する方もいます。

CCEBは語学学校と併設されているので、英語力が満たない生徒は英語コースとのパッケージでビザ申請も可能です。州立の学校と違ってサポートがとても手厚く、日本人スタッフの存在も絶大な安心感があります。

ナミさん曰く、ワーホリビザで来て、学校へ4カ月だけ行き、少ない英語力で仕事を探している人に比べ、学生ビザで語学留学、専門コースを経て、仕事を探す人では、英語力に雲泥の差があるため、仕事のバリエーションが全然違う、とのこと。ローカルと対等に仕事を選べるので、きちんと資格を取得して仕事をさがせば、ワーホリビザの場合でも就労のチャンスはとても広がります。

オーナーのウーリーさんと。彼自身もスイスからの移民なので、留学生の気持ちや立場をとても理解してくれています。
オーナーのウーリーさんと。彼自身もスイスからの移民なので、留学生の気持ちや立場をとても理解してくれています。

この緑のぬいぐるみはカメです。グレートバリアリーフの象徴ですよね。学校は市内中心部にあり、ガラス張りでとても開放感があるキャンパスです。

真ん中の女性がナミさんです。
真ん中の女性がナミさんです。