著者:カウンセラー土屋道代(2025年7月15日)
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「60歳になったら、留学しよう」――その夢を実現させた女性の体験談
こんにちは。カウンセラーの土屋です。
今日は、私が担当したお客様について書きたいと思います。
今年の5月、Yさんという一人の女性が、ブリスベンへ語学留学に旅立ちました。期間は1年間。60歳になってすぐの、大きな挑戦でした。
「60歳になったら、定年退職して、留学しよう。」
そう、Yさんはずっと前から心に決めていたそうです。言葉にするととてもシンプルですが、その夢を叶えるために、彼女は長い年月をかけて準備をしてきました。
Yさんには、ご主人と息子さんがいます。今までは家庭を支えるお母さん、奥さまとしての毎日。子育てと仕事の両立で忙しく過ごしながらも、心の奥底には「もう一度オーストラリアに行きたい」という強い思いがありました。
その原点は、約20年前にさかのぼります。
当時、小学生だった息子さんを連れて、親子でブリスベンに留学した経験があったのです。滞在期間は、わずか1ヶ月半。でも、その短い期間の中で、オーストラリアの自然や人々のあたたかさ、多文化な雰囲気にすっかり魅了されてしまいました。
「また絶対に行きたい。今度はもっと長く、最低でも1年はいたい!」
そう心に決めたYさんは、その後も日々の生活の中で、その夢を忘れずに持ち続けていました。
地域活動と子育て、そして仕事。多忙な日々の中でも夢は消えなかった
Yさんは、ただ仕事をするだけでなく、地域でもとても活発に活動してこられました。
お住まいの地域にあるボランティア組織では、防災訓練、運動会、模擬店、餅つき大会など、さまざまな行事を企画し、地域の子どもたちと関わりながら、支える立場として力を尽くしてきました。
また、お子さんが通った幼稚園から高校まで、毎年のようにPTAの役員を務め、中にはPTA会長として、学校・先生・保護者・生徒をつなぐ大切な役割も担いました。常に人のため、誰かのために行動してきたYさん。ご自身でも「自分の時間」というよりは、「みんなのための時間」が多かったとおっしゃっています。
でも、それでも夢は消えることはありませんでした。
そして、60歳。長年勤めた会社を定年退職したことで、ようやくその夢に向けて本格的に動き出すチャンスが巡ってきたのです。
「今しかない。やっと自由な時間ができたのだから。」
そんな気持ちで、Yさんは留学の準備を始めました。
留学への準備、そして少しの不安
夢が現実に近づく喜びとともに、Yさんの胸には少しの不安もありました。
まず、英語力への準備として、英会話教室に通い始めました。そこではイギリス人の先生に英語を教わり、簡単な会話の練習から、少しずつ耳を慣らしていきました。学生時代以来の英語の勉強。最初は単語を思い出すのも一苦労だったそうですが、それでもコツコツと続けることで、次第に「英語を使う楽しさ」を感じるようになったといいます。
年齢を重ねてからの挑戦に対し、「記憶力や体力が心配ではなかったですか?」とお聞きしたところ、
「実は、あまり気にしていませんでした。普段から体を動かすようにしていましたし、健康には気をつけてきたので、そこは大丈夫だと思っていました」と、Yさんは笑顔で答えてくれました。
それよりも大きかったのは、やはり家族の存在です。
夫と息子を日本に残して、1年間も自分だけ海外に行ってしまっていいのか――。その葛藤は、想像以上に大きかったようです。
「主婦として、母親として、妻として、家庭を守る役割をずっと担ってきました。そんな自分が、“もう一度自分のために挑戦したい”と思うことが、どこかでわがままなのではないかと感じていたんです。」
ご家族は反対するどころか、「行っておいで」と背中を押してくれたそうですが、それでもYさんの心には、ふとした時に「申し訳なさ」のような気持ちが浮かぶことがあったそうです。
「もし私がいない間に何かあったら……」と考えると、なかなか思い切れない。家事や用事は何とかなると頭では分かっていても、心が追いつかない。そんな自分にモヤモヤする日々が続いたといいます。
そして、年齢の壁への不安も

もうひとつYさんの胸にあったのは、「年齢」のことでした。
定年後に海外留学という選択は、まだまだ日本では少数派。周囲には同じような人がほとんどいなかったそうです。
「語学学校って、若い人ばかりというイメージがありますよね。私のような年齢の人が本当に馴染めるのか、正直ちょっと不安でした。浮いてしまうんじゃないかって……。」
若者に囲まれて、自分だけが年上だったらどうしよう。話についていけなかったらどうしよう。そう思うと、期待よりも緊張のほうが大きくなってしまったこともあったそうです。
でも、心の中にはやっぱり「やってみたい」という気持ちがずっとありました。
「今しかない。このタイミングを逃したら、また何年も自分を後回しにしてしまうかもしれない。だったら、思い切って飛び込もう」と決意を固めたそうです。
そんな思いを抱えながら、Yさんは私たちアクティブウーマン留学センターに相談にいらっしゃいました。
次のパートでは、Yさんが実際にどのように留学先を選んだか、ブリスベンへの思い、そしてご本人の趣味や将来の夢について書いていきます。
留学先は、思い出の地「ブリスベン」

Yさんが留学先に選んだのは、20年前に親子留学で訪れた思い出の街・ブリスベン!
ご相談にいらした時も、迷うことなく「やっぱりブリスベンがいいです」とおっしゃいました。思い出の場所であり、すでに土地勘もあり、安心感があるというのも大きかったのでしょう。
ブリスベンは、気候がいいのも魅力です。実際、ブリスベンの冬は沖縄に近い暖かさで、平均気温は20〜23℃。厚着をしなくても外に出られるので、「寒いと家から出たくない」という女性にとっては理想的な環境かもしれません。
Yさんも「冬の寒さが苦手で…」と笑っていました。
また、ブリスベンはブリスベン川沿いに広がる美しい街。フェリーが交通手段として使われており、街中を船で移動できるのも魅力のひとつ。Yさんはこのフェリーが大のお気に入りだそうで、特に夏の夜には、風に吹かれながら夜景を見るのが最高!だと仰ってました。

私に合った語学学校「レクシス・イングリッシュ」

Yさんは、過去の親子留学で通った語学学校で、少し気になることがあったそうです。
「とても良い学校ではあったのですが、当時はある国の学生さんが多くて、ちょっと国籍の偏りが気になりました」とのこと。
そこで、今回の留学では「できるだけ多国籍な環境で、いろいろな国の人と交流したい」という希望がありました。
私はYさんとお話しする中で、「この方には、年齢に関係なく自立した雰囲気の学校が合っている」と感じました。
地域活動やPTAで長年リーダー的な役割を担ってこられたYさんは、「誰かと一緒でないと不安」というタイプではありません。自分のペースで学び、時には一人で行動することも楽しめる方です。
そこでおすすめしたのが、「レクシス・イングリッシュ(Lexis English)」という学校でした。
この学校は、世界中から学生が集まり、国籍バランスが良いことが特徴です。クラスの中では自然と英語を使わざるを得ない環境が整っており、しっかりとした学習サポートも受けられます。
また、Yさんはゆくゆくは英語の資格取得や、さらなる進学も考えていらっしゃったため、IELTSやケンブリッジ英語検定などの試験対策ができる環境が整っているこの学校は、まさにぴったりだったのです。

それでも、最後まで悩んだこと
準備を進めながらも、Yさんは心の中にずっとある迷いを抱えていました。
「本当に行ってしまっていいのだろうか…」
やはり、夫や息子のことが頭をよぎるのです。長年家庭を支えてきた自分が、ここで“自分の夢”を選ぶことに、少し後ろめたさを感じていたそうです。
でも、Yさんはこう考えるようになりました。
「もし行かないでいたら、きっと私はずっと“行けばよかった”と後悔していたと思うんです。仕事や家事をしながら、モヤモヤした気持ちを抱え続けていたかもしれない。それなら、思い切ってチャレンジしてみたいと思いました。」
その言葉には、60年の人生を歩んできた女性の、深い決意と覚悟が込められていました。
留学を通して得たいもの、そしてその先の夢

Yさんがオーストラリア留学に期待しているのは、単なる「英語の勉強」だけではありません。
「英語を通して、もっと世界中の人たちと関わりたい。言葉が通じることで、相手の考え方や文化をより深く理解できると思うんです。」
Yさんは世界中の人々の価値観や考え方に強い関心を持っています。語学を学ぶということは、単に単語や文法を覚えることではなく、異なる背景を持つ人々と心を通わせる手段を手に入れること――Yさんはコミュニケーションの本質をとてもよく理解していらっしゃるように感じました。
留学中には、学校の授業以外でも、現地でのボランティア活動や文化イベントなどにも積極的に参加したいとのこと。英語を学ぶ場所が「教室の中」にとどまらず、「生活の中」にも広がっていることを、Yさんはすでに意識していらっしゃいました。
帰国後の目標は、通訳とワークショップ開催
Yさんには、帰国後の明確な目標もあります。それは、「通訳として活動したい」という夢です。
今、日本にはたくさんの外国人観光客が訪れています。Yさんは、そうした外国人に対して、きめ細やかな対応ができる存在になりたいと考えています。
「英語が話せるだけでなく、気持ちに寄り添って、困っていることに気づけるようなサポートがしたい。日本の文化や習慣を、英語で分かりやすく伝えられる人になりたいんです。」
そして、もう一つの夢は――
自分の手仕事を、外国人旅行者に英語で教えること。英語で教えるワークショップも開くことも考えていらっしゃるそうです。
Yさんの趣味は手芸だそうです。多才ですね!ビーズアクセサリーやマクラメ、ビニールバンドを使った手のバッグや小物作りなど。どれも細やかな手仕事が自慢だそうです。
海外から日本に来る外国人の方に旅の思い出に自分で作った日本のアクセサリーや雑貨を持って帰ってもらえたら嬉しいですよね。

「年齢のせいで諦めるなんてもったいない!」
Yさんは、自分の挑戦が、同じように年齢で何かを諦めかけている人たちの背中を押せたら――
そんな願いも持っているそうです。
「60歳を過ぎたら、もう無理。そんな風に自分に限界をつけるのは、とてももったいないと思います。私はまだまだ、やってみたいことがたくさんあるんです。」
「年を取ったからできない」のではなく、「年を重ねた今だからこそ、できることがある」。それを自らの行動で伝えていきたい、と話してくださいました。
「私がオーストラリアで学ぶ姿を見て、誰かが“私もやってみようかな”と思ってくれたら、それが一番嬉しいです。」
最後に
語学留学と聞くと、「若い人のためのもの」と思いがちです。でも、Yさんのように人生経験を重ねた女性だからこそ、見えてくるものや感じられることが、きっとたくさんあるはずです。
もちろん不安がゼロになることはありません。でも、「やってみたい」という気持ちがあるなら、それが何よりの原動力になります。
60歳を迎えてからの留学。それは“遅いスタート”ではなく、“新しい人生の始まり”。
Yさんの挑戦は、そんなことを私たちに教えてくれています。

